さいたま市盆栽町に位置する分譲住宅である。古くから盆栽に慣れ親しみ、伝統的な芸術として日本が誇る盆栽の聖地でもある。盆栽は、時間や空間と自然を表現し、その美しさは鉢の上の小宇宙とも称される。暮らしも日々の時間の中で自然を慈しみ、美しくありたい。計画地の南側には公園があり、大きな桜の木々がある。四季を大切に思い、儚く美しい花として愛され続けてきた桜。盆栽のように計画地を鉢に見立て、主張せず桜の木々と調和させたい。快適さ便利さを追求し、不自由さを感じないまま目まぐるしく過ぎ去る時間の中、必要なのは、風土に根ざす和みや癒しの心、自然に関心を持ち、大切に思う気持ちの豊かさやゆとりだと考える。物質的に豊かになった今、盆栽町という地域の特性を生かし、忘れかけている和の心、奥深さや調和、自然を感じる住まいを目指したい。 自然界を表現する盆栽は、静寂の中に動きを感じる。盆栽に見立てた外観は、桜との調和を考え灰色とし、力強く伸びる枝を模倣した深い軒により陰影をつけ、和の特徴でもある左右非対称の形状で静寂さと動きを表現した。また、格子や大谷石調の材料、室内には羽目板を用い、桜と寄り添う和の風景を描いた。計画地の南側は公園に開き、東側は隣地と3棟の敷地を分け合う外庭を創り、坪庭や中庭、土間等、様々な庭を散らばせた。