今後の不動産価格はどうなる?
動向や社会情勢の影響を解説【2024年】
不動産価格が上昇しているとされる近年ですが、今後住宅購入を考えている方など、不動産価格の今後の動向が気になっているという方もいるのではないでしょうか。
不動産や土地の価格は様々な指標や社会情勢に影響されるため、今後を考える上では様々なポイントを見ていかなければいけません。
そこで今回は、不動産価格の動向が見られる指標やこれまでの推移、また経済的な背景などとともに、不動産価格の今後についてご紹介していきます。
1. 不動産価格・土地価格の指標

まずは、建物や土地などの不動産価格の動向が確認できる指標にはどのようなものがあるのかをご紹介します。
1-1. 不動産価格指数
不動産価格指数は国土交通省によって公表されている、年間約30万件もの取引価格情報をもとに不動産価格の動向を数値化したものです。
全国での数値や地方・都市圏など地域ごとの数値や、住宅用物件・商業用物件など物件の種類ごとの数値が見られます。
(参考:国土交通省:不動産価格指数)
1-2. 路線価
路線価は、土地価格を測る指標のひとつです。
土地価格は定価で決まっているものではなく、その価格をどういった用途で使用するかによってそれぞれ異なる指標を用います。
路線価は相続税・贈与税を決める際の土地の評価額を算出する際に使用されるもので、毎年1月1日時点での評価額が7月1日に発表されています。
相続税を決めるもののほかに固定資産税や都市計画税などを決める「固定資産税路線価」も存在し、こちらは3年ごとの更新となります。
不動産鑑定士などの鑑定額と専門家の意見価格などを指標に、国税庁によって道路に面する宅地の1㎡あたりの価格が決定されるもので、【路線価×その土地の面積】で土地の評価額が算出できます。
また路線価は、この後ご紹介する地価公示価格の約8割ほどが目安だと言われていますね。
1-3. 地価公示価格
地価公示価格も土地価格に関する指標のひとつで、実際に土地を売買する際などに参考にされる価格です。
全国2万6,000ほどの「標準地」とされる場所1㎡あたりの1月1日時点での評価額が、国土交通省のもとで不動産鑑定士により定められます。
また、国ではなく都道府県知事によって公示される「都道府県地価調査価格」も存在します。
こちらは、7月1日時点での評価となります。
2. 不動産価格の推移
不動産価格の今後を予測するためには、これまでの推移から傾向を読むことも重要になります。
ご紹介した不動産価格指数や地価などを参考に、近年の不動産価格の推移を見ていきましょう。
2-1. 戸建て価格の推移
まず、戸建て価格の大まかな推移を過去10年の不動産価格指数を参考に見てみましょう。

2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 |
99.7 | 100.5 | 101.5 | 102.1 | 102.9 |
2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 |
101.8 | 104.7 | 112.2 | 117.5 | 115.8 |
(参考:国土交通省|不動産価格指数最新データ)
2024年7月現在発表されている2024年3月分の全国の戸建て住宅における不動産価格指数を最新として、過去10年間(比較のため毎年3月を参照)の推移が上記のデータです。
不動産価格指数は、2010年の平均不動産価格を100として数値が算出されています。
この表からも分かる通り、小さな上下はありますが不動産価格は過去10年間上昇の傾向にあり、特に新型コロナウイルスの影響により落ち込んだ2020年以降、回復後はその価格が大きく上昇しています。
2-2. 土地価格の推移
次に、土地価格の推移です。
過去1年間の地価公示価格の推移は、以下のようになっています。

(参考:国土交通省|令和6年地価公示時系列推移表)
今回は2024年から過去10年間の、東京・大阪・名古屋の大都市3圏と地方圏の地価公示価格を抜粋しました。
どの地域でもおおむね緩やかな上昇傾向にありますが、特に東京圏ではより顕著な上昇が見られますね。
地価は人口の流入が今後見込まれるかどうかや開発予定など、需要に大きく影響されるため、オリンピックなどのイベントもあり、人口の集まる東京圏では上昇しやすいでしょう。
逆に地方では、横ばい〜低下に転じている地域も見られます。
3. 不動産価格が上昇している背景
これまでのデータからも分かるように、近年不動産価格は上昇しています。
果たして、その背景にはどのような理由があるのでしょうか。
近年の不動産価格に影響している社会的な要因を、いくつかご紹介します。
3-1. 金融緩和
不動産価格上昇の大きな理由のひとつが、日銀により2013年ごろより行われてきた金融緩和によるインフレです。
金融緩和により金利が低下し、住宅ローンなどが利用しやすくなったために、住宅購入の件数や高額な物件の購入が多くなったことで不動産価格の上昇につながったと考えられます。
土地には限りがあるため、不動産の需要が増加すればそれだけ価値が高まるということですね。
3-2. 世界情勢の影響
不動産価格は、世界情勢にも影響されます。
新型コロナウイルスが落ち着いたことにより経済が回復しつつあり、需要の増加により世界的に物価が上昇しています。
また、ウクライナ侵攻により食料品を中心に物価上昇も見られ、様々な国で物価上昇への対策として金利の引き上げが行われました。
しかし、日本は金利引き上げを行っておらず、世界各国との金利差が生じているため、円安を招いているのです。
円安は、輸入資材の高騰による建築費の上昇だけでなく、次にご紹介するような理由でも不動産価格に影響を及ぼしています。
3-3. 円安による外国人投資家の需要増加
円安によって日本の不動産が割安で買えるようになるため、外国人投資家からの需要が増加しています。
国内でも中々購入する人のいないような高額物件も多く購入されており、不動産価格上昇の要因となっているでしょう。
4. 今後の予測

これまで上昇が続いている不動産価格ですが、今後、価格が低下するということも大いにあり得ます。
日銀による金利引き上げも予測されており、そうなれば住宅ローン金利の上昇も考えられるため、不動産が買いにくくなり、需要減少による価格低下もあり得ます。
しかし、金利は日本経済に大きく影響するため突然急激な引き上げなどは考えにくく、住宅ローンの上昇が起きたとしても緩やかであると予想できます。
また、不動産価格低下の要因となり得るのが、「2025年問題」です。
4-1. 2025年問題の影響は?
2025年問題とは、2025年以降団塊世代が後期高齢者となることで、少子高齢化により労働力不足や社会保障にかかる費用の急激な増加など様々な問題が起きるとされていることです。
少子高齢化や人口減少に伴う買い手不足により、不動産市場も影響を受けると言われています。
特に、若者の少ない地方での不動産価格の低下は顕著となるでしょう。
すでに空き家が増加していることなども問題となっていますね。
まとめ
今回は不動産価格の今後の動向について、現在の状況や社会的な背景とともに詳しくご紹介しました。
不動産価格は現在、様々な要因により上昇傾向にあり、今後も価格が大きく下がることは考えにくいでしょう。
2025年には大阪万博もあり、特に周辺の不動産価格はさらに上昇が見られるかもしれません。
しかし、2025年問題とも言われる少子高齢化や人口の減少に伴い、今後不動産価格のゆるやかな低下もあり得ないことではありません。
住宅購入・売却でタイミングを悩んでいるという方は、今後も国内外の情勢にも着目しつつ動向を読んでいけると良いでしょう。