将来必要となる支出を計算する

総資産を確認して頭金と手元に残す金額を決める

住宅ロ—ンの借入額は自分で決める

住宅ロ—ンでいくら借りるかは収入や資産状況、家族構成やライフプランなど、さまざまな条件で違ってきます。

金融機関へ住宅ロ—ンの相談に行くと、「頭金は物件価格の〇%、お客さまの年収は△△万円ですので、□□□万円までお貸しすることができます」というような説明を受けることがありますが、これは年収をもとにした「金融機関が貸すことができそうな額」であり、「金融機関が貸したい額」でもあります。決して、「問題なくロ—ンを返済できる額」でもなければ「幸せなライフプランを実現できる額」でもありません。

そこで、自分にとって最適な借入金額を決めるためには、まず自分の総資産額を確認し、ロ—ン返済期間と将来のライフプランを考え、頭金と毎月の返済額を決め、そこから無理のない借入額を計算するという順番となります。

総資産を確認して頭金を決める

書籍やネット情報で「頭金は20~30%程度用意」と解説しているのを見かけますが、必ずしもこの金額がすべての人に当てはまるわけではありません。

少しでも借り入れる額を少なくするために手持ち資産のほとんどを頭金にしようとする人がいますが、これはとても危険なことです。先に解説したように住宅ロ—ンの支払計画を決めるには、日々の生活費だけではなく、教育資金や老後資金の準備を考えたマネ—ブランが必要になってきます。

今後必要となる支出、そしてリスク管理として必要となる額を計算し、総資産額から手元に残す資産を引いた額が「頭金」として使える額になります。

手元に残しておく金額を決める

まず、現在の資産状況を一覧表にしてみましょう。預貯金から株式や債権、投資信託、各種保険や金などの現物資産まで、現金へ換金できる資産をすべてリストアップし現在の資産の一覽表を作成します。

次に、残しておく資産を検討します。主な判断基準は、教育資金や老後資金などライフプランに合わせた支出のための資金と、病気や予期せぬ収入の減少や失業に備えたリスク管理のための資金かどうかです。教育資金と老後資金は、目標金額を決めて、毎月の積立できる金額から不足する金額を計算して、いくら残すかを決めます。

次に、リスク管理のための資金として、入院保険や年金保険など将来のために必要なものはそのまま継統し、さらに、毎月の家計費の6カ月から1年分を目安に残します。このように、総資産額からそれぞれ残しておく資産額を引くことで、頭金として使って良い金額を算出することができます。

土地建物代以外にも必要な費用がある

住宅購入にかかる諸費用や手数料を知る

頭金のほかに手数料・諸費用が必要になる

住宅を購入するときには、土地代・建物代のほかに諸費用が必要となります。例えば、3,000万円の住宅を購入する場合は、3,000万ちょうどの資金を用意すればいいわけではありません。

住宅購入の総予算を検討する際には、頭金だけではなく、この諸費用も自己資金として準備する必要があります。

諸費用には、主に住宅購入にかかる費用と住宅ロ—ンの借り入れにかかる費用があります。注文住宅の場合には諸費用だけでも総予算の10%以上、さらに本体工事費以外に地盤改良や水道・電気・ガスの引き込み、外構工事などの別途工事費がかかり、総予算の25%以上となる場合があります。かなり大きな金額なので、不動産会社や施工会社へ事前に見積りを出すように頼んでおくといいでしょう。

仲介物件には税金や手数料がかかる

土地を購入する場合には、税金関係では、地方税である「不動産取得税」と売買契約書や建築請負契約書へ貼る「印紙税」が必要です。不動産取得税は課税標準の3%、印紙税1,000万円超から5,000万円までは1万円となっています。

また、仲介物件では取引価格が400万円超の場合「仲介手数料」として取引価格の3%+6万円(税別)、「登録免許税」や「司法書士報酬」が必要になります。また、仲介業者により手数料がゼロとなる場合もあります。

この他にも先に説明した別途工事費が必要となります。注文住宅では設計資金も必要になります。

住宅ロ—ンの借り入れには火災保険加入が必須

住宅ローンの借り入れに必要な費用としては、契約書に貼る「印紙税」、抵当権の設定登記に必要な「登録免許税」や「司法書士報酬」、「保証料」、「融資事務手数料」などがかかります。また、「火災保険」は住宅ロ—ンの借り入れの際には必ず加入することになっています。

このようにさまざまな手数料や諸費用を理解しておかないと、資金計画が破綻してしまう可能性があります。総予算のうち、土地建物の金額は、中古住宅では総予算の93%、分譲住宅・分譲マンションでは95%、注文住宅では75%程度を目安とするといいでしょう。

また、分からない項目があれば、各社のホームページで確認したり、金融機関のコールセンターへ問い合わせて不明点や疑問点が残らないようにしましょう。諸費用の見積もりや概算金額の計算を施工会社へ依頼してもいいでしょう。

手数料や諸費用の金額によっては、総予算を守るために、購入する物件の見直しが必要になりますので、必ず、契約前に諸費用を明確にしておきましょう。

毎月の収支から返済できる額を考える

月々の返済可能額を計算して借入金額を決める

借入金額を決めるために毎月の家計の収支を計算する

頭金の金額が決まったら、次は毎月の返済額を計算します。まず、現在の毎月の収支を表にしてみましょう。最初に給与など収入を計算します。ボ—ナスの額が今後減少する可能性があったり、ボ—ナスそのものに期待できない場合は予備費として考えて収入には加算せず、毎月の収入のみで計算しますが、その分借入金額は少なくなります。

支出は、現在の生活レベルを変えない前提で計算します。「家を買ったら食費は節約して少しでもロ—ンの返済に回そう」という人がいますが、基本的な生活のレベルを落とす前提で返済額を決めるのは、継続できない可能性があり、おすすめできません。

毎月の支出には必ず「教育資金」と「老後資金」の積立金額を加えるようにします。住宅ロ—ンの返済計画では、三大支出のマネ—プランを決めることが必須となります。

教育資金は、子どもが大学に進学する年から逆算して必要な金額が貯められるように毎月の積立金額を決めます。子どもが複数いれば、人数に合わせた額とします。確実に積み立てるために学資保険を利用してもよいのですが、利回りについては期待できませんので確認が必要です。

次に老後資金ですが、リタイアする年齢までに目標金額を貯めるという前提で毎月の積立金額を決めます。たとえば、65歳でリタイアを考えているなら、30歳から65歳までに老後資金1,500万円を積み立てるためには毎月36,000円の積立が必要になります。目標金額とリタイアまでの期間から毎月の積立額を計算しておきましょう。

住宅購入後にかかる経費があることも知っておく

毎月のロ—ン返済額は今の家貸並みでいい、と考える人も多いようですが、住宅を購入すると、賃貸では不要だった経費が必要となります。例えば、分譲マンションだと管理費・修繕費の積立、戸建てでも、屋根や外壁の修繕費のための積立や設備修理費用が追加で必要となってきます。このような費用は毎月2~3万円以上かかることもあり、戸建ての修繕費は10~15年ごとに百万円以上かかる場合もあります。また、固定資産税の支払いが発生し、火災保険料も貸貸に比べて高くなります。このようなことから、現在の家貸並みに返済額を決めてしまうと、この追加費用分だけでも大きな金額となり、返済が厳しくなることも考えられます。

資産の状況に合わせてロ—ンの返済期間を考える

このように必要な積立額と期間をもとに住宅ロ—ンの返済期間も決めましょう。必ずしも定年のタイミングに合わせる必要はなく、目標金額の達成時期や退職金を含めた手持ち現金の予定額など、資産状況に合わせて返済期間を検討することが大切です。

定年を完済の目標とする必要はない

ライフステージに合わせて借入期間を決める

借入期間はライフステ—ジに合わせて決める

住宅ロ—ンの借入期間を決める上でまず考えることは、毎月の返済額が無理なく支払える額か、ということです。

前ペ—ジで算出した将来のマネ—プランを考慮した毎月の返済可能額と総借入額から借入期間を決めるようにしましょう。

また、住宅ローンの借入期間は、金融機関で用意されている一般的な商品では最長35年ですが、融資条件で定められている期間内なら、借入期間は自分で決めることができます。

事前に決めた総予算と毎月の返済額を優先して借入期間を決めるようにしましょう。

完済時期と定年を合わせる必要はない

今後、65歳定年が定着していくと、65歳が人生の一区切りとなる人が多くなります。そのタイミングがローン完済のタイミングと考えている人も多いようですが、必ずしも定年とロ—ンの完済を合わせる必要はありません。

たとえば、30歳で借り入れ、35年返済の場合はちょうど65歳ですが、だれでも30歳で住宅を購入できるわけではありません。40歳で借り入れ、65歳で完済しようとすると、毎月の返済額が多くなり、とくに40歳代では子どもの教育費負担が大きくなる時期でもあり、老後資金の貯蓄もある程度準備をすすめる時期で、毎月の支出は、かなり大きくなります。

また、長期的な収入の安定にも不安があると、65歳で完済するということは絶対条件ではありません。

退職金でロ—ンを完済する必要はない

65歳以降に住宅ロ—ンの返済が統く人は、退職金を受け取ったら残金をまとめて返済しようと考えている人が多いようです。定年で収入が減るので借金があると不安だからということですが、必ずしも退職金で完済するという必要はありません。老後のマネ—プランと手元にある現金の額で判断するといいでしょう。

例えば、子どもの教育費が予定より大きくなってしまい、定年時までに老後資金の貯蓄が問に合わなかった場合には、老後の生活のリスク管理のために、できるだけ現金を持っておく、という選択肢もあります。もちろん住宅ロ—ンを完済すると「借金がなくなった」という安心感がありますが、老後の生活では思わぬ出費が待っています。急な入院や親の介獲など、保険で準備していても、すべての出費をカバーできるわけではありません。65歳から受け取る年金の額と住宅ローンの返済額、家計の支出を計算して、支払いが継続できるなら、無理に完済する必要はありません。住宅ロ—ンは低金利で借り入れているため、ある意味「コントロ—ルできている借金」です。現金を持つことで、老後生活のリスク管理をするほうが安心した生活を送ることができるでしょう。